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留職レポート

現場に寄り添って考え、とにかく行動する大切さ

貧困層向け医療の現場で、注射器の品質管理の改善に取り組む

テルモ株式会社 研究開発本部開発戦略部 高橋光さん

インドネシア 医療/保健

「1本の針の価値を見つめ直したい」と留職プログラムに参加した高橋光さん。インドネシアのジャカルタでの2ヶ月間の留職プログラムを通じて、医療の質が十分でない国だからこその“付加価値”をつけて仕事を創っていくことや、会社の企業理念でもある「医療を通じて社会に貢献する」を、どのように肌で感じ、体験したのでしょうか。

プロジェクト基本情報 - テルモ株式会社

■留職者:
高橋光さん (当時29歳)
■所属:
テルモ株式会社 研究開発本部開発戦略部
■留職先:
インドネシア(ジャカルタ)
■留職期間(現地):
2013.1-2013.3(2ヶ月間)
■受け入れ先団体:
低所得者層向けの小規模病院運営を行うNGO

留職プログラムに参加した理由

医療の質が十分でない国だからこその仕事のやり方を学びたい

テルモ株式会社は、グローバルに活躍できる人材を育成するため、2012年度から留職の取り組みを始めました。「1本の針の価値を見つめ直したい」と社内の公募制度に応募し選ばれたのは、医療製品の企画・開発に従事している若手社員のひとり、高橋光さんでした。「高度な医療が進み、感染予防の観点から1回使用の注射針が広く用いられている日本の状況と異なり、新興国・途上国の医療現場では1本の針の価値が異なるのではないか。そういった状況の中で、テルモの企業理念である『医療を通じて社会に貢献する』を自分の肌で感じてみたい。そして、医療の質が十分でない国だからこその“付加価値”をつけていく仕事がどのようなものかを学びたいと思いました」

参加団体・担当業務の紹介

課題の発見・提案に加え、トレーニングも実施 自ら活動の幅を広げて、政府との協働にも参加
内容

高橋さんが留職したのは、インドネシアのジャカルタでクリニックを5施設運営し、貧困層向けの医療を提供しているNGOでした。少ないリソースながらも、良い医療を患者さんに受けてもらおうと必死で働くスタッフの姿がとても印象的だったといいます。

高橋さんがクリニックでまず取り組んだのは、「注射針刺し事故のリスク防止」でした。クリニックでは使用済み注射針の廃棄管理が徹底されておらず、針が看護師に刺さり、HIV/AIDSなどの感染症リスクが発生する可能性がありました。その問題を解決するために、プラスティック製容器への廃棄や、使用後、針に安全キャップをはめる習慣を根付かせるための改善策を提案しました。高橋さんは、現地の100円ショップに出向いて改善容器を作るなど、「自分がクリニック長だったら取り入れるか?」という視点で現場で実行可能なものになるよう苦心しました。また、単なる提案だけでなく、スタッフへのトレーニングも実施。トレーニングには、スタッフ全員が積極的に参加し、高橋さんの提案に自発的に工夫を加えるなど、問題改善に向けて全員が一丸となって取り組んでくれたそうです。

その他、高橋さんは、注射器の質をコントロールするための「注射器チェックシート」の作成も行いました。注射器の品質に関する項目を洗い出し、クリニック職員が注射器を使用する前に確認すべきことを明文化し、品質確認の習慣化を促す仕掛けも作りました。

NGOのスタッフからは、「課題の発見・提案だけでなく、積極的に自分で動き、実際の改善までしてくれたところが素晴らしかった。『注射器チェックシート』の仕掛けづくりでは政府機関とも協働するなど、自ら活動の幅を広げて取り組む姿はとても頼もしかったです。日本のように予定通り進まないなど、政府機関も含めさまざまな文化の人を巻き込むのは大変だったと思いますが、つねに前向きに取り組んでくれました」と感謝の言葉をいただきました。

留職プログラムを通じて得た3つの学び

1. 異文化の中で周囲を巻き込み、新しい価値を創造する経験
内容

見ず知らずの土地に一人で滞在している状況では、自分自身で考え、行動しなければ何も動きません。次第に、何でもやってみよう、挑戦してみようという意識を持つようになっていったという高橋さん。言われたことを期待値以上に行うだけでなく、相手にとっての付加価値を考え、自分の仕事を創っていく楽しさを学んだといいます。また、最初はクリニック職員の方々と信頼関係を築くことに難しさを感じていたようですが、毎日の“お茶飲み話”も含めて日々粘り強く話すことで少しずつ信頼してもらえるようになったそうです。「相手に貢献したいということが伝わる行動・態度・熱意が重要。一生懸命やる姿は人種や言語の壁を超えて伝わるということを、身をもって実感しました」

2. 新興国市場のリアルな現状を肌で感じた
内容

高橋さんは、クリニック職員によく「テルモの注射器は高い」と言われていました。一方で、彼らが使っている低品質の注射器「薬液が漏れる」「壊れる」という問題を抱えていました。「現場は、ただ価格が安いものを求めているのではなく、守るべき品質は必ずある」「報告書には決して出てこない現場ならではの困ったことが存在しており、そこをリアルに体感できない限り、現地医療に貢献する事業は出来ない」と感じた高橋さん。実際に現場を見ることの重要性や、日本の常識を捨て現地の医療課題に寄り添って考えていくことの大切さを痛感したといいます。
また、訪問先のNGOは、政府と一緒にプロジェクトを行うことが多く、既に現地で課題解決に取り組んでいる政府とうまく付き合っていくことが、今後ビジネスをする上で重要であることも大きな気づきでした。

BOP/新興国というキーワードで繋がる社内コミュニティを率いた経験
内容

今回インドネシアに留職したのは高橋さん一人でしたが、同時に高橋さんをサポートするチームが社内で立ち上がりました。出発前に関心のあるメンバーを募ったところ、最初は数名という規模でしたが、終了時には、70名以上の社内メンバーが、SNS等を通してこのプロジェクトに関わっていました。一人現場に立つ高橋さんは、遠く離れた日本のチームメンバーを率いるリーダーシップの難しさと楽しさを感じたようです。「現地の考えを知る人間は自分一人しかいないからこそ、日本側に現地の状況をきちんと説明し、現地が考えていることをどのように伝えるかを日々考えていました。このようなコミュニティをまとめる経験ができたことは、今後のキャリアに生かせると思います」。NGOスタッフからは、「高橋さんのリーダーとしてのキャリアはまだ始まったばかり。良いリーダーになるには、色々な経験に自分をexposureさせ、異なる人とのコミュニケーションの中で、open-mindedな人の接し方を学ぶことが大事。今後も積極的に続けてほしい」と、更なる飛躍を願う激励の言葉もいただきました。

留職体験を今後のキャリアにどう活かす?

日本での常識を捨てて、実際に現場が抱えている医療課題に寄り添って考え、ときには、現地政府と協力しながら、熱意をもって解決策を提案していくことの大切さを学んだ高橋さん。今回の経験を、今後グローバルに仕事をする際の自分のアイデンティティのひとつとして活かしていきたいと考えています。

参加者の声

テルモ株式会社 研究開発本部開発戦略部 高橋光さん
内容

留職は単に新興国をマーケットとして理解するに留まらず、異文化の中で真剣に考え、現地の人と志を共に行動する貴重なプログラムでした。日本の方が知識や技術が進んでいるから、現地に教えてあげることにより貢献できるというのは間違っており、現地NGOのリーダーから行動力やリーダーシップの取り方など学ばせてもらうことばかりでした。自分の限界を決めつけずに、現地が抱えている課題に真っ向から取り組む姿勢は、社会人として常に持ち続けたいと思います。
また今回の留職を通じ、医療を通じて社会の一員として貢献していることを実感することができました。自分が働いている会社の製品が、遠い異国の地でも高品質として評価されていることは励みに思うと同時に、もっと現地に貢献できる必要なものが何なのかを考えるきっかけになりました。今後は留職で学んだことを活かして世界で活躍していきたいと思っております。

担当者の声

テルモ株式会社 人材開発室 廣瀬美緒さん
内容

グローバル経営環境において変化・成長する組織を率いていくリーダーが求められる中、本業のスキルを活かして自ら方向性を示し新興国の現地の方々と協業する経験は、視座を高め心地よい領域を超えてやりきる実行力を体得する機会として非常に有効だと思いました。新興国市場ではより根源的な社会課題に直面することが多く、社会貢献の本質に立ち返って当社が提供する価値や存在意義を自分に引き寄せて考え、自問し再構築していくきっかけになっていると思います。

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