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留職レポート

お客様目線で解決策を提案、技術者の原点を経験

インドの貧困層における子どもたちの教育支援をサポート

株式会社日立製作所 情報・通信システム社  ITプラットフォーム事業本部 鳥越収さん

インド 教育/職業訓練

「システム を実際に使う人を目の前に設計したことで、ユーザー目線での開発の重要性を再確認できました。また、自ら動き、できることを提示しながら信頼関係をつくり、周囲を巻き込んで成果を出す、というリーダーシップを学びました」
6週間の留職期間をこのように振り返る鳥越収さんに、インド・ジャイプールでの経験を紹介していただきました。

プロジェクト基本情報 - 株式会社日立製作所

■留職者:
鳥越収さん (当時33歳)
■所属:
株式会社日立製作所 情報・通信システム社  ITプラットフォーム事業本部
■留職先:
インド(ジャイプール)
■留職期間(現地):
2013.3-2013.4(1.5ヵ月)
■受け入れ先団体:
貧困層のためのコミュニティスクールを支援しているNGO

留職プログラムに参加した理由

技術開発一辺倒だったこれまでのキャリアを振り返り、 枠を超えるチャレンジに挑む
内容

株式会社日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部では、グローバルでタフな人財の育成を図ると同時に、現地でのリアルなビジネス体感から実業における人脈形成やビジネスヒントの獲得も期待して、2012年度から、新たに「留職プログラム」の導入をスタートしました。初年度は、3名のITエンジニアを派遣し、そのうちのお一人が、鳥越収さんです。

鳥越さんは、サーバの回路設計を専門にするITエンジニアです。「全く異なる環境で働くことで、言葉やバックグラウンドが違う人たちと協業していく力を身につけたい」「技術者、そして日立という会社の枠の外に出て、世の中から求められていることを把握したい」という目的のもと、2013年3月上旬から6週間にわたり、インドのジャイプールに本部をもつNGOに派遣されました。

参加団体・担当業務の紹介

教育の現場に入り込み、教師たちにとっての 使い易さにこだわったMIS(データ収集・分析ツール)を提案
内容

インドではカースト制度で将来の職業が決まってしまうため、とくに農村部やスラム等の貧困層においては子どもの教育を軽視する傾向が強く、子どもたちの教育の機会が奪われてしまうケースが多いという課題があります。今回鳥越さんが派遣されたNGOは、貧困層の子どもたちに適切な教育を施し、子どもたちの将来の可能性を広げるための活動をしている団体でした。具体的には、スラムや農村部に住む貧困層の子どもを対象に地域を巻き込んだコミュニティ・スクールの運営を行ったり、公立学校がよりよい教育プログラムを提供できるようにコンサルティングサービスを行なっています。

NGOでは、運営するコミュニティ・スクール7校の教育水準を上げるために、さまざまなデータを各学校から取り寄せていましたが、最適なデータの分析・管理方法が確立されておらず、データの有効活用ができていない状態でした。そのため、学校毎に抱える運営上の問題点の発見が遅れてしまう、あるいは問題に対する改善策の経過観察ができないという課題を抱えていました。そこで鳥越さんは、コミュニティ・スクール7校に散在するデータの収集と分析ツールの開発及び導入を担当することになりました。


鳥越さんは、まず学校の運営関係者やプログラムコーディネーター、教師等にヒアリングを実施しました。そして、扱うデータの種類、分析したいデータ項目を明らかにし、データの収集から分析まで業務フローの整理を行い、複数の関係者にとって運用しやすいMISを提案しました。この提案の結果、今まで複雑だったデータ収集のフローが簡易化され、学校毎が抱える問題点の発見や、それに投じた改善対策の効果検証がスムーズにできるようになりました。

できることを自分から見つけ、動き、 周りを巻き込みながら成果を出す
内容

また、鳥越さんはNGOからの要望とは別に、「日本の文化をインドの子どもたちに教えたい」という思いから、授業の休憩時間や放課後の時間を活用して、子どもたち向けの折り紙教室を自主的に開催。これが子どもたちに大変人気だったため、最終的にはNGO代表の目にとまり、アート/クラフトの授業の一つとして折り紙が正式プログラムとして導入されることになりました。担当教師とともに、プログラム開発にも参加したほか、本業の知識を活かしITリテラシーの授業を行うなど、出来ることを自分から見つけ、積極的に学校の運営に貢献しました。

留職プログラムを通じて得た3つの学び

1. 全く異なる背景をもつ人や組織における信頼関係の築き方
内容

現地での業務開始直後、鳥越さんはNGO担当者との会話がどうしても噛み合わず、コミュニケーションを取るのに苦労しました。「これは単純に言葉の壁という問題だけではありません。日本では、日立という会社の中に存在する共通の暗黙知の中で会話が成立していていたことに気づきました」

大きな戸惑いを感じた鳥越さんでしたが、すぐに頭を切り替え、相手を観察することから始めました。「自分が発した言葉を相手が理解してくれているだろうか、自分の意図通りに相手は受け取ってくれているだろうか。相手の反応を細やかに観察・確認することで、インド人スタッフとの理解のギャップを一つ一つ埋めていきました」。同時に、鳥越さんは相手を尊敬し敬意を払うこととにも気をつけたといいます。その結果、インド人スタッフから高い信頼を勝ち取ることができました。NGO担当者の方も、「単に言われたことをこなすだけではなく、実際に使う人と話をし、その人の業務内容や忙しさを考慮したツールの開発や業務フロー設計を行っていただいた」と高く評価されていました。

2. 自ら行動し課題を体感して、問題の本質を捉える
内容

はじめの一週間、鳥越さんは技術者としての8年の経験に基づく仮説思考をもとに業務に当たっていました。現地団体とのディスカッションで「それなら、こうしたら良いのでは?」を連発する鳥越さんに対して、「それはできない」と回答するNGO。議論が全く進展しませんでした。

ブレイクスルーのきっかけとなったのは、コミュニティ・スクールを訪問したときのこと。教師たちが実際にどのように授業を行い、どんなデータを扱い、それらがどのように記録されているのか、また、教師たちが働く環境はどうなっているのかを実際に目にしたときに、自分の過去の経験に基づく仮説では、その現場に対して最適な提案が導き出せていなかったことに気づいたといいます。

そのことに気づいてから鳥越さんは頭を切り替え、現場に足を運び、データ収集及び分析に関わっている多くの人たちにインタビューを実施。実際にツールを使う人たちにできるだけ近い目線で本質的に必要な機能と彼らが現実的に使いこなせるものの提案を行いました。

3. 相手の文化に興味をもち、自国の文化に誇りをもつ
内容

「複雑なインドの社会課題に対して、情熱をもって取り組むNGOと一緒に時間を過ごすことで大きな刺激を受けました。そして、彼らが強い誇りをもって自国の文化を語り、日本文化にも興味をもつ姿が印象的でした」と話す鳥越さん。「グローバルな環境で活躍するには、ビジネス面でのスキルを磨くだけでなく、人として魅力的でなければと思いました。そのためにも、自国の文化はもちろんのこと、相手の国の文化に興味をもって積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が大切だと感じました」。

留職体験を今後のキャリアにどう活かす?

異なるバックグラウンドをもつ人との協働という観点で、今後のキャリアに大きく活かすことができる、と鳥越さんは語っています。
これまでは技術者以外の人、例えば自社の製品を販売してくださる販売会社の人と話す時でもあくまでも技術者目線で話をしていたところを改め、今後は販売会社の人の立場に立って技術的な観点を説明していきたいと話しています。販売会社側の意図を理解し、技術者側との間に立って通訳する役割を担いたいということです。

参加者の声

株式会社日立製作所
情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部
開発統括本部 ストレージ開発本部 ハードウェア設計部 技師
鳥越収さん
内容

関わっている人々の、子供たちの人生を豊かにしたい、次の世代のために国を良くしたい、という思いが強く伝わってくる団体でした。なにより、子供たちの学びたいという意欲が直接感じられ、彼らへの敬意がしっかりとモノづくりをしなければ、という思いに繋がりました。
これまでも、お客様のことを考えて取り組むことの重要性は理解しているつもりでしたが、今回はまさにお客様とともに問題の分析から取り組み、改善案を提示していくプロセスを体験できたと思っています。

さらに、実際に彼らと一緒に社会問題に取り組み、困難さを体感したことで、今の日本を作った先人の取り組みに対する敬意と感謝を感じるとともに、今後の世代への責任も強く意識しました。
もともと技術の世界は、これまでの開発されてきたものの上に成り立っている部分も大きいのですが、次の世代を意識し、今の技術を確立することの重要性を感じました。社会を継続可能なものにするという言葉の一端を感じられたのではないかと思っています。
領域に囚われず、枠を越える経験をさせていただいたことに対し、関係者への感謝と、今後も枠を超えられる技術者になりたいと、強く思っています。

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