留職先リーダーの一言が人を動かす
インドの手工芸品職人を支援するNGOで営業力を発揮する
パナソニック株式会社 AIS社 セミコンダクター事業部 相木礼子さん
インド 経済支援

入力してください半導体の海外営業を担当する相木さんは、インドの手工芸品生産者支援のNGOで留職し、新しい販路として日本展開を考えるというミッションに取り組みました。帰国後もBOPビジネス関連の勉強会を開催し、社会課題に対峙する相木さんに、留職前後のご自身の変化を書いて頂きました。
プロジェクト基本情報 - パナソニック株式会社
- ■留職者:
- 相木礼子さん
- ■所属:
- パナソニック株式会社 AIS社 セミコンダクター事業部
- ■留職先:
- インド(デリー)
- ■留職期間(現地):
- 2013/12-2014/1(1ヵ月間)
- ■受け入れ先団体:
- 農村部の工芸品生産者たちのキャパシティビルディング/販売支援を行うNGO
留職プログラム参加のきっかけ
学生時代から新興国での社会課題の解決に興味をもっていましたが、自分には特別なスキルも無く、どのような手段で関わればよいのかアイデアも、そして何より一歩踏み出す勇気も無かったため、行動に移せずにいました。そんな時、社内のイントラネットで留職プログラムを知り、まさに自分の希望にぴったりだとすぐに参加したいと思ったものの、やはり自分に出来ることが全くイメージできず、応募申し込みにも暫く躊躇していました。 しかし、プログラムへの参加が決まり、事前研修の中で業務で得たスキルや経験を棚卸ししたり、具体的に留職先候補のNGOの業務内容や課題の説明を聞いているうちに、国籍もバックグラウンドも違う人たちで目標を共有してチームを作っていくというような自分にとっては日常業務と捉えていたチームビルディングなども、留職時には大事なスキルの一つになると認識することができました。
何もしないで後悔するよりはチャレンジしようと思い切って応募して留職の機会を得ただけでなく、自分の過去の経験やスキルを振り返る時間も持つことができ、本当に有意義な経験ができました。
心に残ったNGOの方からの言葉
留職先のNGOはインドの手工芸品の職人さんの支援をしており、私のミッションは将来日本市場でインドの工芸品を売り出すための、マーケティング調査や具体的なパートナーを探すことでした。しかし、本職である半導体の営業とは全く分野が違い、どのような視点で何をしたらよいのかわからずに悩んでいた時期も多々ありました。とてもありがたいことに、毎朝、非常に忙しいNGOの女性CEOが二人で話をする機会を作ってくれていたので、行き詰っていることを伝えたところ、「業種は違うけど、あなたが普段会社でやっている仕事と同じように考えて行動してくれればいいのよ」と優しく言われたことがあります。そのときは正直あまりピンと来ず、「とは言っても、半導体と手工芸品ではターゲット顧客も売り方も違うし、NGOと利益を追求する企業とではそもそもの目的が違うのに。。」と思っていました。ところが最終的に、職人さんの雇用を増やし、収入を増やすためには、より多くの手工芸品を販売することが必要で、そのために世界市場でインド工芸品の認知度を上げ、商品のよさを伝えて、お客様に理解して購入してもらう、という流れは、私が普段の職務で営業として活動していることと全く同じであったことに気が付き、後からCEOの言葉を理解することができたことが、今でも心に残っています。

帰国後、積極的になった自分
私がインドで経験したこと、見たこと、感じたことを出来るだけ多くの人に伝えることは、留職者のミッションの一つだと考え、社内で機会があれば、積極的に話をするようにしていました。すると、これまで仕事の話しかしたことがなかった人が、実はインドや社会貢献、BOPビジネスなどに興味があるとわかったり、とても大きな発見がありました。一ヶ月を過ごし、身近に感じるようになったインドという国やインドの人たちにいつか恩返しをしたいと感じていて、社内有志でインド向けのBOPビジネスを考える時間を持つ活動を始めています。現時点では具体的な案は無く、事業化はとても困難だと感じていますが、それでもいつか事業の方向性を少しだけでも変えることが出来るかもしれないと今は信じて、小さな勉強会を始めました。これは留職前の自分には全く考えられなかったことです。日常の業務に戻った後もインドやBOPビジネスとしての社会貢献に関わる時間を持つようになり、留職前とは自分の生活や考え方が、以前に比べ充実してきたと実感しています。
このような貴重な経験をするために、ご理解頂いた社内関係者と、多大なサポートをして頂いたクロスフィールズの皆様に本当に感謝しています。
担当者の声
クロスフィールズ プロジェクトマネージャー 松島由佳

12月の肌寒いインド・デリーに飛び込んだ相木さん、すばらしい手工芸品を作り出す職人さんたちの生活を少しでもよくするためと、日本のサポートチームと協力しながら、短期間ながらも大きな成果を残して下さいました。普段から海外出張が多いとのことですが、出張とはまた違い、現地の人に「依頼」や「指示」をするのではなく、現地の人と一緒に「協業」する、難しさと楽しさを感じたこの経験を、今後の仕事にも活かしてもらえたらと思います。