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留職レポート

呼吸をするように会話をする、相手と同じ目線で向き合う大切さ

インドの文化に言葉で意見を交わしながら理解を深めていく

パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・リビング事業部 望月麻奈美さん

インド 教育/職業訓練

公衆トイレの普及など、インドの衛生環境の改善に取り組む、40年以上もの歴史の長いNGOで留職に取り組んだ望月さん。日本での商品企画・マーケティングの経験を活かし、ヒアリングなどを通じてトイレ利用など衛生活動への意識や行動の変化を測定・調査し、生徒や教師の意識や行動変革のための活動・ツールの提案をした。わずか1ヵ月で大きな成果を残した望月さん。現地で、どんな壁にぶつかり、向き合ったのか―。

プロジェクト基本情報 - パナソニック株式会社

■留職者:
望月麻奈美さん
■所属:
パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・リビング事業部
■留職先:
インド(デリー)
■留職期間(現地):
2013/12-2014/1(1ヵ月間)
■受け入れ先団体:
貧困層の衛生環境改善を支援するNGO

現場に行き、五感を働かせ、見聞きする

留職に参加した動機・きっかけを教えてください。

出張ではなく、海外の団体にどっぷりと浸かって、異なる背景や考え方の人達と一緒に仕事をしてみたかったことに加え、商品企画のノウハウが少しでも社会課題解決に役に立てるのか試してみたいと思い、参加しました。

失敗したこと、苦労したことはありますか?どのように乗り越えましたか?
内容

留職先団体の非常に幅広い活動の中で、情報が乏しい中、どのプロジェクトに取り組むのか決定するのに苦労しました。

出発前に少ない情報の中から改善提案できそうな課題をいくつか抽出し、仮説を元に計画を立て、現地で団体に詳細をヒアリングしながら課題を絞り込もうと考えていました。しかし、いざ行ってみると、団体は非常に受身的で取り組むプロジェクトや課題は不明確のまま、自ら取り組み課題を決めるにも活動内容を把握する必要があるが、この団体は40年以上の歴史がありインド全域で幅広く活動しているため、団体の活動すべてを理解するだけで留職期間が終わってしまうと感じました。

また、情報はまとまった書類では得られず、各担当者からヒアリングをしなければならないことが分かったため、今動いており、デリーから車で行けるプロジェクトに絞って現場に赴き足で情報を得ることにしました。実際に現場に行って五感を働かせて見聞きしているうちに様々な疑問が沸いてきて、関係者と質疑応答しながら情報を収集。話をしていくうちに、人が人を紹介してくれて色んな立場の人がそれぞれ感じていることを直接聞くことができ、プロジェクトの課題を把握することができました。

このようにして最初の1週間を情報収集に費やし、 リモートメンバー3名のうち、2名はエンジニアでしたので、技術的なノウハウが活かせる課題に取り組みたいという思いがありましたが、現場で見聞きして一番改善提案が求められていると感じた自分の感覚を信じ、メンバーを説得して公立学校での衛生教育プログラムに取り組む決断をすることができました。

インド人とのコミュニケーション

現地の方とのコミュニケーションで、気を付けたこと、学んだことは何ですか?

学んだことは、自分の意見をはっきりと周りの人に伝えることが大切だということ。そして、意見に優劣はないということです。インドではプロジェクトの現場に行く度に、公衆衛生の改善に人生で初めて取り組む私に、「どう思う?」と意見を聞かれました。自信がない中、感じたことを自分の言葉で伝えたことで、短期間でも自分のことを理解していただけたように思います。今まではプロジェクト推進はいかにみんなの意見を取りまとめるかが大切と考えていましたが、今後は経験が浅い業務でも臆することなく自分の考えも発信し、メンバーの相互理解を深めながらプロジェクトをまとめて行きたいと考えています。

団体に溶け込み、活動をうまくいかせるために工夫したことなどはありますか ?
内容

できるだけ団体のことや一緒に働く団体メンバーを理解するために同じ目線になろうと努力しました。そのために、簡単なヒンドゥー語を覚えて違うプロジェクト担当の人とも挨拶をするようにしたり、プロジェクトメンバーとはランチを一緒に食べるようにしたりしました。意図した訳ではありませんでしたが、結果的に一番メンバーとの距離を縮められたのは、買い物でした。12月末のインドは寒さをまったく知らず、薄着しか持って行かなかった為、ショッピングに連れて行ってもらいました。インド女性もみんな買い物が大好きです。これがカワイイ、これはイマイチ、などと試着しながら服を選んだり、店員との価格交渉を一緒にしていくうちに仕事中だけでは分からなかった性格やチーム内での役割分担も分かり、その後非常に仕事を進めやすくなりました。

現地のやり方を尊重する

日本の仕事の流儀の違いを感じて、いつもとは異なるやり方でチャレンジしたことはありますか ?

報告の仕方です。(多くの企業がそうだと思いますが)パナソニックでは調査企画、報告から提案まで資料をパワーポイントで作成し、プロジェクターなどで映し出し、スライドに沿って説明します。留職先団体ではプロジェクターがなかったため、最初はパワーポイントで一生懸命作った計画案を、持参したノートパソコンの画面を見せながら説明しましたが、ほとんど見ていただけませんでした。しばらくして留職先団体では、日々の報告は口頭で行い、節目毎に政府機関の報告書のように「レポート」という形でまとめて上司に提出していることが分かり、現地のやり方を尊重するとともに、彼らのやり方に合わせた方が提案も受け入れられやすいと思い、最終報告は口頭で説明し、詳細データなどはレポートにまとめて提出しました。大学卒業以来レポートは書いていなかったので、英文でのレポートを完成できたことは自信につながりました。

誰かに言われた一言で印象に残っていることはありますか ?

インド人と「呼吸をするように会話をする」という言葉です。これは、インドで手織産業の持続的発展を支援するために手仕事布ブランドを立上げ、運営されている小林さんからのアドバイスでした。プロジェクトマネージャーの嶋原さんがセッティングしてくださり、小林さんとお食事をする機会をいただいたのですが、小林さんは以前にコンサルタントもされており、インドと日本の橋渡し経験が豊富な方でいらっしゃいました。情報が得られない上、派遣先団体に何を求められているのかよく分からず焦っていることを相談したとき、「呼吸をするように会話をしてみたら」とアドバイスいただきました。日本人は自分たちのミッションを達成するためにインド側の話をあまりよく聞かず、一方的な主張ばかりしがちでコミュニケーションになっていないことが多々あるとのことでした。

その言葉にハッとさせられ、3週間で課題を見つけて提案をしなければならない、というこちらの都合で私は勝手に焦り、ちゃんと相手に向き合っていなかったかもしれないと思いました。翌日からシリアスになりすぎず、自然に会話をするように心がけたところ、次第に普段の会話の中で相手の本音をキャッチできるようになり、団体メンバーのことをより理解できるようになりました。相手の本音を理解できたことは、取り組み課題の優先順位を決める際の大きな指針になりました。

インド人と働いてみていかがでしたか ?
内容

私は世界中どの国の人でも人間はみな同じだと考え接しています。しかし、より相手の行動や考えを深く理解し、自分の意見を正確に伝えて理解していただくには相手の文化や社会的背景を知ることは非常に大切だと再認識しました。

今回学んだことのひとつに、インド人のコミュニケーション方法は口頭で行うということがあります。留職前に留職先団体にEメールを送っても一切返信がありませんでした。出発前はなぜ返信してくれないのか、とイライラしてしまいましたが、現地で直接会って話をすると、しっかり話を聞き、質問にも答えてくれます。プロジェクト状況把握のために数多くの公立学校を訪問しましたが、そこでも説明資料はほとんど役に立たず、口頭での質疑応答が一番情報を引き出すのに役立ち、インドではface to faceで文字ではなく言葉で意見を交わしながら理解を深めていく文化だと知りました。帰国後、Eメールを送りましたが、やはり返信はありませんでしたが、今回はその行動に納得してしまいました。その国の組織にどっぷりと浸かって仕事をする留職は異文化を理解するのに非常に有効だと感じました。

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