NPO法人クロスフィールズでは、新興国の留職プログラムでグローバルに活躍できる人材の育成、企業・行政の新興国進出を支援します。

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留職レポート

人々に本当に役に立つ技術を提供したい

現地への影響を見極めながら技術を取り入れる姿勢に学ぶ

パナソニック株式会社 ES社 コア技術開発センター(当時) 丸山博さん
パナソニック株式会社 ES社エナジーシステム事業部 R&Dセンター(当時) 村上薫さん

インドネシア 環境/エネルギー

部族の王国として現在までそのコミュニティが受け継がれているインドネシアの小さな村々に導入された小規模な水力発電所。パナソニックのチームは、そこで生まれる余剰電力の活用の提案に取り組みました。

プロジェクト基本情報 - パナソニック株式会社

■留職者:
丸山博さん (当時36歳) 、村上薫さん (当時33歳)
■所属:
パナソニック株式会社 ES社 コア技術開発センター(当時) 、パナソニック株式会社 ES社エナジーシステム事業部 R&Dセンター(当時)
■留職先:
インドネシア(ジャカルタ)
■留職期間(現地):
2013.3-2013.3(1ヶ月間)
■受け入れ先団体:
コミュニティをベースとした小規模の水力発電を運営するNGO

留職プログラムに参加した理由

グローバルの現場での経験を通じて、社会や会社に貢献したい(村上さん)
内容

パナソニックでは、技術、研究、デザイン、マーケティングといった異なる専門性を持つ5名のメンバーのうち、2人は現地に実際に行く「留職者」として、3名は日本から問題解決をサポートする「リモートチーム」として本プログラムに参加しました。

実際に留職したのは、住宅・非住宅設備機器のネットワークシステム商品の設計開発を手がけるエンジニアの村上さんと、製品の使いやすさの検証を専門とするエンジニアの丸山さん。村上さんは、東北復興のため、リーダシップを取って人や国を巻き込みながら頑張っている友人たちの姿に心突き動かされ、留職プログラムへの応募を決意。「グローバルの現場で実際にどんな問題が発生しているのかを体感し、得られた状況を日本にフィードバックすることで社会や会社に貢献したい」という想いがありました。

異なる文化や専門分野を持つ人との協業から、今後の働き方を考えたい(丸山さん)
内容

丸山さんは、異なる文化圏に属するインドネシアの人たちや、異なる専門分野をもつチームの人たちと共に課題に取り組むことで、今後の自分自身の働き方を考え、また、新興国の現地コミュニティの人たちの生活を理解し、彼らが何を望んでいるのかを考える機会にしたいと思いプログラムに参加しました。

参加団体・担当業務の紹介

村の文化とバランスを取りながら、余剰電力の調査や活用について提案
内容

2人が派遣されたのは1993年からインドネシアの村々で小規模水力発電所の導入を支援しているNGOです。インドネシアでは、政府による電力事業が追いついておらず、国内の1/3以上の人々が、政府による供給電力を享受できていません。それらの地域の多くは農村部を中心とする貧困地域であることに着目したこの団体は、地域の住民と共に小規模水力発電施設を建設し、運営方法等を教育することを通して、住民の所得の向上や、経済・事業運営に関する理解の向上を支援してきました。

この団体が導入した発電所は日中に余剰電力が発生しており、その余剰電力を活用して住民の所得を向上させたいと考えていました。そこで、パナソニックのチームは、同団体のスタッフと共に、2つの村を訪問して調査を実施し、余剰電力の調査や活用について提案を作成しました。

3週間という短い現地業務の中で成果を上げるため、事前に現地とスカイプミーティングや質問表のやり取りを通じて調査や提案の仮説を立て、さらに社内でBOPビジネスに興味のある有志メンバーから多角的なアイディアを収集し、検討を進めてからインドネシアへと向かいました。

内容

現地業務が始まって1~2週目は、農村で調査を実施しました。調査に向かった先は、山一帯が古くから部族の王国として現在までそのコミュニティが受け継がれている村で、NGOのスタッフも長い期間住み込み、村の文化とバランスを取りながら慎重に小規模水力発電を導入してきたところでした。「村人の意志を尊重したい」「調査に来たと思われることで何か貰えると期待させたくない」という現地団体スタッフの言葉を受け、丸山さんと村上さんは、慎重に調査を実施しました。

実際の電力消費量を調査したり、村民と村の将来について議論したりする一方で、日本のチームとの電話会議も重ね、最終的に「電力測定の自動化案」「農村調査方法と分析方法の改善案」「余剰電力活用による所得向上施策案」の3つを提案。現地スタッフからは「自分たちが考えたことのない面白いアイディア」「もっと長く一緒に村にいって、提案の実現に向けて色々議論ができれば理想的」といったコメントを貰いました。

留職プログラムを通じて得た3つの学び

1.  「まかせて・まかせず」の精神を学んだ
内容

今回の留職プログラムを通じ、自分のプロジェクトマネージメントスタイルを見直したと話す村上さん。現地団体は、水力発電所を村人たちが「自分たちのもの」と感じるようになることを非常に大切にしており、村人自身で水力発電導入の決定をするよう促し、発電所の設立も、彼ら自身が建設するようにサポートしています。「村人の責任感を育てたい」という現地団体のマネージメント姿勢を見て、今までは、自分がタスクを持ちすぎていて、メンバーが育っていなかったということに気づきました。メンバーが当事者意識を持ち、主体的に物事を進めていけるように、これからは、「責任は取りつつ、前にでるのではなく、裏で汗をかき、サポートする、そして賞賛はメンバーに」その意識を持ち続けたいと思いますと語ります。

2. 本当に役に立つ技術とは何かを考えさせられた
内容

丸山さんは、村で印象的だった言葉として、「enough」と「moderate」がある、と話しています。農村の調査で、村の人たちと将来について議論している時に、「テレビ等を通じ世の中に色々なものがあるのは知っているが、それらを全部欲しいとは思わない。我々は「これで十分」というところを知っている(enough)。」と言っていたのが記憶に残っているそうです。また、「道路はでこぼこで不便な面もあるが、それらをいきなり全てアスファルト舗装にはしない。アスファルト舗装によって多くの車が入って来た時の影響は全て予測できないから。実際、他の地域でアスファルト舗装した結果、車を使った違法な森林伐採が増え、禿げ山になってしまった。」と話していて、彼らの少しずつ影響を見極めながら技術を取り入れる(moderate)姿勢に考えさせられた、と話しています。

3. 知識として知っていたことを実感することができた
内容

日本側のサポートチームとしてこのプログラムに関わった磯部さんは、現地の考え方を大切にした上で提案を考える必要があると実感することができたと言います。「村では火以外で料理をしてはいけないというルールがあり、本当に驚いた。便利だからといって家電製品は提案できない、文化を前提にした商品戦略が必要だということを実感した。本で読んだことがあったが、現地行って人々の暮らしに実際に触れないと分からなかったことだ。」

留職体験を今後のキャリアにどう活かす?

現地の伝統や文化を生かした新規商品開発に取り組みたい(丸山さん)
内容

日本に比べ、物質的には豊かではないものの、精神的にはずっと豊かな暮らしに触れることができました。そのような伝統や文化を維持しながら、さらに豊かに暮らせるきっかけを提供したい思います。また、逆に、現地でのよいところを日本に紹介したり、それらをヒントにした新規商品を開発したいと考えています。

留職でつながったネットワークを顧客への価値提供に生かしたい(村上さん)
内容

留職体験で得られたものが、数多くあります。特出して取り上げるとすれば、異なる文化で日本人が圧倒的少人数の中でのプロジェクト推進経験、そして社内の変革仲間です。

まず前者について。私の所属するチームに、マレーシア人とバングラディッシュ人の新入社員が今年加わりました。身近なところでも多様化が一層進んでいます。現在、彼ら・彼女らとは直接仕事はしていませんが、今後、留職での文化背景の異なるメンバーとのプロジェクト推進経験を生かしたいと思います。日本式のやり方を押し付け、日本の規律に染まってしまわないように、彼らの強みである多様性が活きるようにしていきたいと思います。

そして後者ですが、留職活動およびその後の活動を通してたくさんのイノベーションに意欲的な社内仲間に出会うことができました。またその仲間が更なる仲間へと繋がっていっています。今後の企画や開発においても、そのネットワークを継続し協力しあいながら、顧客へ価値を提供していきたいと思っています。仲間が徐々に繋がっていることが留職後は始まりであると実感した瞬間です。

参加者の声

パナソニック株式会社 (当時)ES社 コア技術開発センター ヒューマンシステムグループ 丸山博さん
内容

今回の留職を通じ、現地NGOスタッフ、滞在した村の方々、リモートチーム、そしてクロスフィールズのスタッフ・・・たくさんの人と繋がることができました。また、その後も、社内におけるBOPビジネスのワークショップに誘っていただいたり、社外でも関連する研究会やNPO、NGOと交流の機会を得ました。

そうした様々な立場、専門、目的を持った人と接することで、これまでなら知りえない世界をたくさん知ることができました。さらには働く意味や生きる意味までも考えさせられました。

短期間で成果。この経験は自分の人生にとって、とても「お得」でした。

パナソニック株式会社 (当時)ES社エナジーシステム事業部 R&Dセンター 通信制御技術グループ 村上薫さん
内容

本当に行って良かった!私たちが現場を足で歩き、現地の方と衣食住を共にし、この目で見てきたことは、ほんの一部にしかすぎないとも思います。しかし、一部ながらも社内の人が知りえなかったことを知ることができたとも思っています。今後も机上で考えるのではなく動いて考え、恵まれた日本という環境に生を受けた者の責任として、社会に貢献していきたいと思います。

担当者の声

パナソニック株式会社 CSR・社会文化グループ 奥田晴久さん
内容

我々の留職は派遣者の二人が現地で活動を行いますが、実は3名のリモートメンバーという仲間がいて、5人のチームで活動していることが大きなポイントだと思います。
派遣前は約2ヶ月弱をかけて課題の想定から仮説の設定までをチームで行います。この期間が非常に重要で、この期間に醸成されたチーム内の課題意識の共有が派遣後の活動に大きく影響すると感じています。今回の派遣でもチームでの事前活動があったからこそ日本にいるリモートチームと現地の状況をシェアし、彼らの熱いサポートがあったからこそ、留職の成功につながったのだと思います。

当社の場合、留職者の選定については、自発性を最重視しています。参加者は休暇を活用し、更に渡航費や宿泊費などの実費も負担して、この活動に参加しています。それだけに、自分たちが現場に飛び込み何かを掴んで帰ってきたいという意識が源泉になっているので、現地で成果を出す意識も相当高いと感じています。

村上さん、丸山さんも今まで技術畑で国内を中心に業務に取り組んでいましたが、今回の留職で現地NGOと寝食を共に活動し、悩むことを通じて、現地の視点でものを考えることができるようになり視野が広がったようです。リモートのメンバーも二人を通じて同じように意識の変化があったことは間違いありません。メンバー皆が自分たちの現在の仕事に役立てて頂いているようで今後が楽しみです。

留職は、会社として新興国のNPO/NGOへの貢献と新興国への意識をもった人材の育成と、個人の新興国でのビジネスや社会貢献に取り組みたいという気持ちを同時に実現出来る、両者にとってWIN-WINの関係構築が可能なプログラムだと思います。

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